ブログ「津久井進の弁護士ノート」には、土居由佳弁護士が中国残留孤児訴訟と憲法について高校生に講演をした際のことについて
一人の生徒が、
「北朝鮮など,共産主義国で訳の分からない、理解不能な国が日本に侵略してきたら困るから,自衛のためには憲法は改正すべきだ」
と発言しました。
すると、会場中から拍手が沸き起こりました。
という報告がある。
この理屈は今に始まったことではなく、北朝鮮を「ソ連」に変えれば30年も40年も前から言われていたことだ。陳腐な主張だが、それでもわかりやすさは超一級。偉そうな言い方をすれば、俗耳に入りやすい議論、という。
北朝鮮の侵略・攻撃ってのは具体的にはどういう事態なのだろうか?テポドン発射?核攻撃?日本海側都市の軍事制圧・占領?実際にはどれも「ムリムリ(笑)」としか言いようがないのが、かわいそうなぐらい国力が弱い北朝鮮だ。
可能性があると思われているテポドン攻撃について、軍事評論家で東京国際大教授の前田哲男さんは「マガジン9条・憲法9条Q&A」で次のように説明している。
「テポドンの上に乗っかる爆薬は、1トン未満です。核弾頭は付いていない(10年後はわかりませんが)ことが、認められています。1トン未満の通常弾頭が東京のド真ん中に落ちれば、もちろん大損害を与えますが、東京空襲のときのB29は1機に4トン半、それが350機ぐらい来ました。…一方航空自衛隊の攻撃機F2は最大8トン、つまりテポドンの8倍の爆薬を積むことができて、平壌まで行って帰ってくることができるんです。F2は現在49機保有されています。…自分たちよりも大きな攻撃力を持つ日本に対し、簡単にテポドンを撃つ理由はないはずです。(注)
仮にテポドンが飛んで来ても、迎撃能力はありません。アメリカにもありません。イージス防衛艦に積んでいるスタンダードミサイル(PAC3)にしても、地上発射型にしても、いまのところ航空機を撃破するためのミサイルであって、ミサイルを撃破するためのミサイルではありませんから。…弾道ミサイル防衛(BMD)は、まだ海のものとも山のものともつかないような、まだ実験室の技術といえます。迎撃するということ自体が空想といっていいような領域です。しかもいま完成したとしても、配備が完了するのは10年以上先の話になるわけで、脅威が今あるとすれば何の役にも立たない。
仮に迎撃ミサイルが計画通りの能力を発揮するとしても、相手はすぐに対抗手段を持つことができます。たとえば、弾頭におとり弾頭をつけて大気圏に入った途端に3つに分離するというような対抗手段をとるならば、こちらは迎撃ミサイルの数を3倍にしなきゃいけない」
そう考えると、どの程度軍拡すれば
「よっしゃー、安心」
と言えるのだろうか?北朝鮮の危険、そのほかの国の危険、考えもつかないような危険、みーんなまとめてかかってこいと言えるにはどうすればいいんだろうか。
前田さんが言うように、飛んでくるものを途中で打ち落とすのって、アニメとかゲームならともかく、すごく難しい。まして、これは仮にの話だが、垂直落下みたいな攻撃方法をとられたら物理的に防ぐ方法はありえない。
ミサイルだけではない。世界で突出した軍事力でガチガチに武装した「唯一の超大国」アメリカに2001年9月11日、なにが起こったか。もっと武装しないからアメリカはやられたのだろうか。ってことは、侵略や攻撃を防ぐには日本もあれ以上にやらないといけない?侵略・攻撃防止のため軍拡・改憲が必要だという人は、リクツ上はそうならなければならないはず。
「いや日本はそこまでやらなくても…」
なぜ?アル・カイダにあまり狙われてないから?それはどういうこと?イスラムとの関係がアメリカと違うから…?
侵略を防ぐ、攻撃を防ぐってことを考えるときに、軍事力を真っ先に思い浮かべるのはあまりと言えばあまりに幼稚で単純だ。そんなもので防がれている要素は小さく、結局は国際関係の持ち方が安全を規定する現実に目を覚ました方がいい。9条・軍縮を掲げる者にしばしば向けられる「お花畑」という悪罵がどういう人にこそふさわしいか、明白だ。
(注)前田さんがインタビューで述べている内容について
(1)イージス艦が積んでいるのはSM-3、PAC-3は地上発射型 (2)両ミサイルは航空機撃墜を狙ったものではなく、弾道弾迎撃用 (3)既にPAC-3は自衛隊への配備が完了し、SM-3も米国で初期型の開発が完了
との指摘を読者からいただいた。
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なるほど♪ママと申します。
津久井先生のブログを読んで、私もこの生徒さんの発言に、思わず「う〜ん…」と、唸ってしまいました。
でも、こちらのブログのこの記事を見つけて、すご〜く、希望をかんじました!
勇気の出る、素晴らしい記事をありがとうございます!
ただ、ブログに書いてもあまり広がりはないことも事実だと思っていて、リアル社会、リアルコミュニケーションでどれだけこのことを言えるかが大きいと考えています。
今後ともどうぞよろしくお願いします!
北朝鮮の核が軍拡で防げるとは限らないことには同意します。
しかし、北朝鮮がやっていることは「核が嫌ならエネルギーをくれ」という脅迫です。そんな国に「国際関係」が通用するとは思えません。それとも、大人しくエネルギーを差し出すべきなのでしょうか?
実際に北朝鮮が主に交渉しているのは、「軍事大国」の米国だということもお忘れなく。
また、日本の軍備は対北朝鮮用とは限りません。軍備刷新を続け尖閣諸島などでも強硬姿勢を崩さない中国、強硬姿勢の目立つロシア…。そんな中、直接の敵=北が弱小なはずの韓国も、新戦闘機やイージス艦を導入し、積極的に軍拡を図っています。「独島」まで目標と謳いながら…。
日本から9条を奪おうとしているのは、周辺諸国のこのような動きではないでしょうか。
ついでに、軍拡が必要ない例として、米国と911を引き合いに出すのもどうかと思います。日本が、米国のように世界各国に軍事的、経済的に強圧的関与をしている国なら分かりますが…。
多岐にわたるご意見ですね。まず北朝鮮の核は、弱小孤立国の生き残りを賭けた戦略ですから、開発に成功してしまった以上タダで放棄させることは本来的に不可能だとみるべきだと思うのです。エネルギー供与はイマイマシイと感じる余地はあるのですが、日本あるいは/またアジアもしくは東アジアの安定と平和、軍縮、核廃棄に結びつくカードを熟考して切っていくほかありません。たとえ感情的にはイマイマシくても、それが長期的には日本と周辺の利益をリードするやり方と考えています。
また、北朝鮮の瀬戸際的なやり方(brinksmanship)でも「外交」は「外交」と言うほかありません。それ故、ご指摘のように米国も交渉に臨んでいるのだと思っています。外交の背景に相手国の安全を脅かす圧力が必要になるケースも、望ましくはありませんがあり得るとは思います(この辺は民主党・前原氏−私はあまり支持しない政治家ではありますが−なんかがそう言いますね)が、軍事力のみを意味するわけではないと思っています。例えば安倍首相が「米国債を売る」と言及しようもんならドルは崩壊する可能性があります。逆に日朝間の交渉の桎梏になっているのは、例えば拉致カードの切り方のまずさなども指摘されています。
周辺国の軍拡は全くもって不当ですが、この解決はこっちの軍拡によってはあり得ません。
米国の9/11が軍縮問題にとって大変きわだった例であることは理解していますが、例外ではないと思います。まさに、米国の国際関係の問題だと考えています。
軍縮戦略の洗練の必要性を痛感します。